世界から見た日本の「営業生産性」が低い理由と改善策

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投稿者:
代表理事
小沼 勢矢

本コラムでは「世界から見た日本の営業生産性とは?営業ROIから見る日本の営業実態を解明」というテーマで解説してまいります。 日本の営業活動や事業活動を世界と比べた際、日本という国全体の営業の生産性は高いのか低いのかを徹底的に解明していくことが趣旨です。 読者の皆さんは、日本の営業生産性は高い、低い、あるいは世界と比べて平均的、どちらだと思いますか?後のセクションで答えをお話します。

この記事はPodcastでオーディオセミナー配信しています。
目次

営業生産性を計測するための指標「営業ROI」


営業生産性というものを測る時に欠かせない「営業ROI」という指標があります。

ROIは「Return on investment」の頭文字で、投資効率を測る時に使われる指標のことです。

営業ROIは、営業の分野にこの「ROI」を活用していく考え方です 。

営業ROIにおいては、営業の人件費や旅費、その他営業活動に関わる諸経費などコストを「投資=investment」とみなします。

そして実際の営業活動の結果得られる売上高総利益、つまり「粗利」をリターンとみなします。

投資に対して何倍のリターンが得られるのか、数式では「粗利/営業コスト」で表される数値が、営業ROIと定義されます。

例えば営業活動にかかるコスト、つまり投資が100で、得られた粗利が400だとした場合に営業ROIは4倍(400%)です。

営業ROIは、「いかに少ない投資で大きな営業の成果を上げることができているか」を見る指標です。

世界グローバル企業のROIは4~5(投資に対するリターンが4~5倍)

世界のグローバル企業における営業ROIの指標は、結論から述べると大体4倍から5倍、つまり400%から500%です。「営業活動での投資に対し、4倍から5倍のリターンが得られる」というこの数値が、ひとつの大きなベンチマークとされています。

日本企業はどうなっているのでしょう。

冒頭でお聞きした「日本の営業生産性が高いのか低いのか、それとも平均なのか」という質問にもつながりますが、残念ながら世界のグローバル企業と比べて日本の営業生産性は低いです。

各国における業種ごとの粗利と日本におけるそれぞれの粗利を比べたデータを参照すると、やはり日本企業の営業ROIは非常に低いとわかります。

例えば2021年の営業ROIを比較すると、電気・機械の業種では日本企業の平均が1.6、世界のグローバル企業平均は2.0です。

自動車部品では日本の企業が1.8、グローバル企業は2.1です。建築資材では日本の場合は1.7、

世界が1.8。半導体はかなり差がついており、日本が2.1であるのに対して世界は4.8なので半分以上の差となっています。家電も日本の1.4に対して世界は2.5という大きな差です。

他すべてのデータで、残念ながら日本の営業ROIは世界のグローバル基準と比べると低くなっています

日本の営業ROIが低い理由は「粗利率を高める」「営業活動におけるコスト率を下げる」が実現できていないから

なぜ日本の営業ROIは低いのでしょうか。

端的に述べると、営業ROIを上げるために必要な手段「粗利率を高める」「営業活動におけるコスト率を下げる」について、日本の企業はどちらも上手くできていないためです。

少ない営業コストで高い粗利が得られていれば「営業の効率が良い」「生産性が高い」という状態になり、結果的に営業ROIは上がりますが、日本企業は実現できていません。

詳しく言及すると、営業コストがべらぼうに高いものの粗利率は高いというように偏っているわけでもなく、営業コストは高く、粗利率は低いという、どちらも上手くいっていない状態です。

また営業コスト率も、ベンチマークしているグローバル企業の平均値11.6%に対して日本企業は約15%という、コスト高の状態です。3.4%の差ですが、コスト率においてはこの程度の数値でも非常に大きな値であるため、日本企業がグローバル企業と戦うのは難しい状況といえます。

日本企業には努力が足りないのか?

日本企業が努力していないのかといえば、そうではありません。日本企業は類まれな営業努力をおこなっています。

例えば、日本政策金融公庫が発表している「中小企業の景況見通し」を見てみましょう。

この資料は、タイトルの通り中小企業それぞれがこれから先の景気について、どのように見通しているのか回答した内容を、日本政策金融公庫が独自にまとめたものです。「日本政策金融公庫 中小企業の景況見通し」とインターネット検索していただければ誰でもご覧になれます。

「中小企業の景況見通し」では、毎年、中小企業がどういった経営課題に対してどのように力を入れていくのかについて把握することができます。経営課題とは、例えばIT面の強化、人材の確保・育成、資金調達、技術力強化、研究開発etc……といった内容です。

そういった数多くの経営課題の中で、毎年総数トップとなる経営課題があります。

それは「営業販売力の強化」です。

つまり多くの企業は営業販売力を自社の課題として認識していて、強化すべきと考えている。しかしながら、結果的に営業の生産性は上がっていないというのが日本企業の実態です。

日本企業が「営業の生産性」を向上させるために必要なこと

どうすれば「営業の生産性」を上げることができるのでしょう。

前述の通り、アプローチ方法は大きく二つ「粗利率を高める」「営業のコスト率を下げる」というものでした。そこでそれぞれにおける日本企業に特化した改善方法について考えていきたいと思います。

粗利率を高めるために①「プライシングの改善」

粗利率を高めるために必要なこと、ひとつ目は「プライシングの改善」です。

プライシングを改善しなければならない理由は、日本企業の悪しき慣習である「値下げ競争」の中で戦っている企業が未だに多い状況となっているためです。

値下げ競争が展開されているうちは、どうやっても粗利率が上昇することはありません。お客様に適正な価格で買っていただくための努力が必要です。

私、小沼は2012年からこれまでにアメリカ、シンガポール、上海、エストニア(特にエストニアは世界最先端のICT技術を有すとされています)、アイスランド、スペイン、スウェーデン、デンマークという国々への海外視察をおこないました。

海外視察で印象に残ったこととして、各国の企業は「自分たちの商品・サービスに対する自信」を持っている、というものがあります。日本企業と強く異なる点であると感じました。

海外の企業は、安易に値下げ交渉に応じず、適正価格で販売するという努力をしているのです。

単純に何でもかんでも値上げをしなさいということではなく、「適正価格で販売する」努力です。

適正価格で販売しなければ営業生産性が上がらず、「社員に対しての還元」ができなくなります

自分たちの報酬が満足に入ってこない状況では、結果的に従業員のモチベーションは下がってしまい、営業生産性の低下を引き起こします。日本企業にはそういった問題が内在していると私自身は思っております。

価格による断りを受けない営業方法については、「個別相談で価格による断りを受けないための2つのアプローチ方法」の記事に記載しているのでぜひ読んでみて下さい。

粗利率を高めるために②「下請け体質からの脱却」

粗利率を高めるために必要なもう一つが「下請け体質からの脱却」です。

上記プライシングの問題とも近い部分ですが、日本企業には「得意先」となる企業のために、例えば配送回数を増やしたり、無償配送をおこなったり、あるいは無理難題を聞いてしまうという「お客様第一主義」という体質があります。

「過度なサービス」が自分たちの首を絞めてしまうという、下請け体質が特に日本の中小企業の場合はまだまだ多いです。類似例として「ダンピング」「不当な買い叩き」なども該当します。

下請け体質から脱却できないことが日本企業の大きな問題のひとつであり、結果的に粗利率を下げてしまっているのです。

いつまでも大手のお客様、大口のお客様に依存するのではなく、しっかりと自分たちで新規事業を生み出し、成長戦略を仕掛けられる体制を持たなければなりません。

営業コストを下げるために①「そもそもの営業活動の時間を増やす」

それでは、「営業コストの下げ方」はどうすればいいでしょうか。

「セールスパーソンが自分のセールスに当てている時間、使い方」を分析したあるデータがあります。「海外のベストプラクティス事例」と「日本の典型的なセールスパーソンの時間の使い方」を比べた研究結果です。こちらでは大変興味深い結果が出ています。

日本の企業は、セールスパーソンが営業に時間を割けていないという現状にあるとのことです。

例えば、社内会議あるいは会議のための資料作成、朝礼、勉強会など、営業活動ではない業務に時間をかけている企業が、グローバル企業と比較して圧倒的に多いようです。これは大きな問題です。

日本のセールスパーソンは、自分が持てる最大時間を「100%」とした際、「顧客に対して営業活動をしている時間」は10~25%でしかないそうです。

しかしながら海外で軌道に乗っている生産性の高い企業のセールスパーソンは、営業活動にかける時間の割合が50~55%となっています。

日本企業と比較すると2~5倍もの差が生じています。日本企業がいかに「営業活動にまったく関係がない活動」に時間を費やしているのかが浮き彫りになることでしょう。

海外の企業は、営業担当者であれば営業に時間を使いましょう、というコンセプトでそもそも時間が物理的に多く設定されます。

この大きな隔たりを埋めるべく、まずはあなたの会社で「そもそもセールスパーソンが営業活動、お客様の開拓をどれほどできているのか」を一度考えてみてはいかがでしょうか。

営業コストを下げるために②「営業の変動費化」

営業コストを下げるために必要なもう一つの努力は、「営業の変動費化」です。

日本企業にはどうしても年功序列制が構造として根付いており、勤続年数が長ければ長いほど「コスト」が上がっていく傾向にあります。海外はそのようなことはありません。

もし企業が、営業活動そのものに時間を充てることができないという根源的な問題を抱えているのであれば、私は「『営業というコスト』を外注、アウトソーシングすることによって、営業活動そのものを『変動費化』する」ことを提案したく思っています。

外注により、セールス能力が高い方々に自社の営業生産性を上げてもらい、さらに「成果報酬」を精度として採用すれば、固定費としてのリスクも下がります

私は、「営業の変動費化」は企業にとって武器になると思っています。

営業力を持ったプロにアウトソーシングすることで、まず固定費が減る、つまり営業のコストが下がります

そしてアウトソーシング先が営業活動に時間を充ててくれることとなるため、結果的に営業の時間は十分に確保できた状態となり、営業生産性が上がるということです。

私たちプロセールス協会がプロセールスを育成、輩出する理由も、プロセールスという存在が「営業コスト削減のための解決策」としての「営業コストの変動費化」を実現できるからです。

プロセールス協会が活動すること自体が、日本企業への「営業の変動費化」の提案となっています。

「営業」はもうアウトソーシングするべき時代なのではないでしょうか。

先ほどまで見てきました、日本企業の営業力が上がらない、営業生産性が世界と比べて低いといった問題は、決して今に始まったことではなくずっと低いままです。

つまり、構造的、根源意識的な問題なのです。それを抜本的に変えるには時間が必要ですが、一方でその問題を抱えた当事者である日本の企業が今すぐにでも得られるソリューションとして、「プロに営業活動をアウトソーシングする」ということが大切なのではないかと私は思うのです。

企業活動における「体制を長期的に改善、改革していく」という文脈と、まずすぐにでも目の前で打てる手段である「営業のアウトソーシング」という文脈、この2つを切り分けて、それぞれの文脈を進行させていければ理想的なのではないでしょうか。

プロセールス協会は、この「目先の改善にフォーカスした支援」を提供します。

営業のアウトソーシング、営業の変動費化には「プロセールス協会」をご指名ください

日本の営業ROIは世界と戦っていくにはまだまだ厳しい状況であるとわかりました。

冒頭で、日本の営業ROIが高いか低いかという質問を投げかけた際、読者の皆さんは直感的に「低いのではないだろうか」と思われたと思います。その直感は当たっていました。

そこで必要なものは日本企業の意識的、構造的な問題を跳ねのけるための「自社でできる努力」と「外部に任せる部分」の両立です。

下請け構造からの脱却などは現実的に厳しいことと思われます。大手からの仕事がなければ、あるいは嫌な取引先があっても案件を勝ち取っていかなければ当期の売り上げに響いてしまいます。

現実を踏まえた上で構造的に今すぐ実現するのが難しい部分に、私は「プロセールス」がソリューションになると考えております。

コラムに共感していただき、プロセールス協会へアクションを起こして貰えれば幸いです。

プロセールス協会の具体的なセールスロジックについては、無料の「体験セミナー」にてご説明していますので、ぜひご参加ください。

投稿者:
代表理事
小沼 勢矢

一般社団法人プロセールス協会代表理事。株式会社プロアライブ代表取締役。脳科学を活用したコンサルティングを8年で3,500人以上のクライアントに提供してきた。コロナ禍で営業に課題を抱えるクライアントが増加したことがきっかけで、脳科学を基にしたセールスメソッドを確立。価値あるサービスを世の中に上手く届けられずに困っている事業者様を支援したいという想いから、一般社団法人プロセールス協会を設立。 【出版実績】 自分の脳に合った勉強法(フォレスト出版) シャイン博士が語るキャリア・カウンセリングの進め方(翻訳) シャイン博士が語る組織開発と人的資源管理の進め方(翻訳)

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