「押し売り」とお客様に思われてしまうと、商談は断られて終わる
セールス活動をしていて「押し売り」とお客様に思われてしまうと、成約はなかなか難しくなりますよね。やはり、できることならお客様に「押し売り」でなく、「欲しい」と思っていただいた上で営業したいものです。
一度「押し売り」だと思われてしまうと、やはりお客様には断られやすくなってしまいます。押し売りという先入観が芽生えてしまえば、その後いくら上質なセールストークを繰り広げても、お客様は「いらないものについて説明されている」とか「いらないものについてクロージングされている」と考えてしまうんです。
いったい、押し売りと思われてしまうのはなぜなのでしょう?
「押し売り」事例
まず、「押し売り」と思われてしまうケースについて、事例を交えて解説します。
例えば私、小沼とあなたが知り合いだったとします。私から、いきなりダイレクトメッセージで「○○さん、今度ちょっとお茶しませんか」と連絡が来たとしましょう。その「お茶しませんか」という誘いに対して、あなたは「久々に小沼さんに会うのだから、お茶するぐらいだったらいいか」と軽い気持ちでその場に行ったとします。
当初は「お茶をする」という目的で来ているわけですから、あなた自身も「何か商品が売られる」とか「何か提案をされる」とは思っていないわけです。
久しぶりに会って軽く世間話をした矢先に、私が「ところで○○さん、実は最近新しいビジネスを始めました。その新しいビジネスに、あなたにも是非加入していただきたいです。つきましては月額がこれぐらいで……」と、いきなり自分のビジネスの紹介、自分が関わるビジネスの紹介をされたらどうですか?
「押し売り」と思うのではないでしょうか?まさにこれが「押し売りと思われてしまうメカニズム」なんです。
最初の目的が「お茶をしよう」だったにも関わらず、「実はそういう魂胆があったのか」と思われてしまう。つまり、売る側の魂胆が見えて「こちら側に商品を売ろうと思ってこの場をセッティングしたんだな」と思われた瞬間に「押し売り」になるのです。
「押し売り」による最大のデメリットとは?
そして押し売りの最も強烈かつ、ネガティブなダメージとは、既存の人間関係だったのであれば、おそらく相手は押し売りをした相手に二度と会おうとは思わなくなるということです。
なぜならば、押し売りされてしまった相手には「もう1回会ったら、同じことが起きるんじゃないか」というイメージが生まれ、懸念材料となるからです。
まったく新規のお客様に対して、飛び込み営業やテレアポをかけた場合も、押し売りだと思われたら断られて終わりです。結果的に成約にはなりませんが、一般的なセールス活動とも捉えられます。
対して既存の人間関係では、押し売りだと思われた瞬間に以降の人間関係が終わってしまいます。もしあなたが企業に所属していた場合、前任者の努力や苦労を無に帰してしまうことになります。この「全社に影響を及ぼすデメリット」について意識しなければ、セールスパーソン自身の評価を落としてしまいかねません。
営業が「押し売り」だと思われてしまう理由
上記の例を振り返ってみると、最初は「お茶をしたい」ということが目的だったはずであるものの、本当の目的は「商品を販売する」というものでした。
つまり、「最初の切り口となる目的」と、「本来の目的」の間にずれが生じています。
このような状態になると「押し売り」になります。
「先出しは提案」「後出しは売り込み」
私がよくセールスの現場でお伝えしていることに「先出しは提案」「後出しは売り込み」という概念があります。
つまりお客様に、先んじて「今日はこういう趣旨です」、相手がご友人、知人の方であれば「この場はこういう理由でセッティングされています」とお伝えする。こちらは「提案」になります。
前段落の事例で言えば、会う前にきちんと主催者が趣旨を伝え、その上で合意を取れたのであれば「押し売り」にはなりません。もし趣旨を伝えた後に、相手がその場に来てくださったのであれば「合意」が得られた状態となるのです。そこで商品の提案をしようと、サービスのプレゼンをしようと、合意形成の下で場が成り立っている限り、押し売りになりません。
私は常に「後出しじゃんけんをしてはいけない」と申し上げています。セールスにおける後出しじゃんけんとは、すべて押し売り・売り込みになってしまいます。
実はこの「後出しじゃんけん」をしてしまっている営業マンが非常に多いです。先ほどは既存の人間関係について解説しましたが、既存の人間関係だけではなく新規の商談でも同じです。
仮にあなたが異業種交流会などで知り合った人がいたとして、別の日に軽くミーティングでもしませんか、ということになったとします。あなたはなんとなく、なんの気なしにそのミーティングに参加したにも関わらず、相手が自社商品・サービスの紹介ばかりしてきたとなったらどうでしょうか?二度とその人と話をしたいとは思わないですよね。
上記もまさに後出しじゃんけんです。最初に「軽くミーティングしませんか」という目的で約束を取り付けてるにも関わらず、最後には自社の商品・サービスの紹介。結局売り込みの場だったのか、という理解しかできないのです。
最初に合意することが肝心です。合意形成ができるかできないかが、押し売りと思われるか、提案と思われるかを左右します。
最初に場の目的について納得してもらう「心理的合意形成」で後出しじゃんけんを防げる
繰り返し説明している通り、「最初に相手に提示した目的」と「最後の対応(セールスを始めてしまう等)」が違っていた場合、相手に「最初の目的は嘘だった」と伝わってしまいます。人間はこの時点で脳内にノイズが生じ、違和感となり「押し売りだった」と判断します。
相手に違和感を抱かせないために、場をつくる前にはその場が用意された理由を説明して、相手の納得=YESをもらっておくことが必要です。
最初にYESを取っておくことを、心理的合意形成といいます。
心理的合意形成ができていれば、商談は非常にスムーズに進みます。そのためセールスの現場では、はじめに心理的合意形成をいかに形成するかに注力すべきです。
YESをもらうことの重要性については、『なぜYESセットは有効なのか?効果のあるYESと無いYESの違い』に記載していますので、是非ご確認ください。
とはいえ、最初に「今日はセールスの場です」「今日はあなたに、私の商品・サービスをプレゼンします」と伝えられてしまっては、その場での合意形成にはなかなか繋げづらそうですよね。
よほど人間関係ができていた、あるいはよほど事前のセットアップができていない限り実現しづらいことと思います。
ということは、やはり事前のセットアップが大切といえます。相手にちゃんと合意形成をしていただくための事前の準備です。「今回がどういう場であるか」という、場についての説明はとても大事なことです。意外とこのセクションを見誤っている方は多いです。
特にBtoCの場、個人対個人のビジネスだと「何となく話をしましょう」と言っておきながら、商品のプレゼンをしてしまうケースが非常に多く見受けられます。顧客は、プレゼンが始まった途端に「押し売り」と感じます。
小沼自身の「押し売りされた」実例
私、小沼も実は過去に「押し売り」を感じたことがありました。
当時の私は大学生。自身の学びを得るために、貪欲に勉強会などへ足を運ぶタイプでした。ある時、知り合いの女性の方から「とても経営に強くなれる勉強会がある」と誘われ、東京のとある場所に連れていかれました。
当時は、人を疑うということを知らなかったこともあり「何か面白いことが聞けるかな」という気持ちで参加したところ、趣旨はネットワークビジネスの勧誘であると判明しました。過去の成功者が額縁の中に飾られていたり、現在成功しているという方が登壇しては、そのビジネスについての素晴らしさと、有効性を語ります。
たくさんの人が集まりましたので、中にはおそらく感化された人もちゃんといるのでしょう。私は全く契約する気にはなれないどころか、むしろ勧誘者に対する疑いを持ちました。
「経営の勉強ができる」と言っていたにも関わらず、結局は私を自分の下につける、というための場だったことが分かった瞬間、残念ながら私の中では上記のような気持ちになってしまったんですね。
しかし後から考えると、少なからずいた「ビジネスの勧誘にサインした人」に対しては、ちゃんと合意形成ができていたように思うのです。事前にちゃんと、当時私が誘われた「場」についてのセットアップができていて、サインした人々は私のように「経営について学ぶ勉強会」と受け止めてはいなかった。ちゃんとその場の意図が伝わっていたから、きっとサインに至ったのでしょう。
やはり合意形成とは、すべてのビジネスにおいて共通する原理だと思えます。
「押し売り」にならないように、商談最初に「心理的合意形成」を得よう!
あなた自身も是非、「押し売り」にならないようにしっかり最初に合意形成して「場の目的」を伝えることを心がけてください。
「場の目的」を伝えるための具体的なトーク内容については、『セールスに苦手意識がある人に知って欲しい押し売りだと思われない方法』を参考にして、実践してみてください。
押し売りと思われてしまう理由とは、心理的合意形成ができていないからです。「提案は先出し」ということを意識してください。
合意形成により、営業で嫌な思いをする人、営業されて・押し売りされて嫌な思いをする人が減っていくと私は思うのです。
私は、そういった価値観を広めたいと思っています。当コラムや音声メディアをご覧になっていただけたのであれば是非、あなたにはちゃんと場のセッティングというような合意形成をしてからセールスに臨んで頂けたらと思います。