御用聞き営業・ソリューション営業の違いと「第3の営業スタイル」

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投稿者:
代表理事
小沼 勢矢

今回のコラムでは「御用聞き営業とソリューション営業の根本的な違い」という内容を中心に、セールスの基礎知識についてお届けいたします。抜本的に売り上げや受注率が変わる内容となっておりますのでぜひ、明日からの営業活動に取り入れてみてください 。

この記事はPodcastでオーディオセミナー配信しています。
目次

「御用聞き営業」から「ソリューション営業」へ変わるべき?

「御用聞き営業とソリューション営業」について今回解説することには、理由があります。それは、私どものもとにご相談に来られる方の多くが「御用聞き営業からソリューション営業へ転換していきたい」というお話をなさるからです。

営業形態を変革すると、会社の売上は上がることが期待できます。とはいえ私、小沼自身はソリューション営業だけではこれからの時代を進むことは難しいのではないかと思っています。

もちろん自社が「御用聞き営業」しかできていないのだとしたら、まずはソリューション営業へと昇華させていくことが目的となるでしょう。

ソリューション営業をある程度できている企業の方は、その先にある「プロセールス」の概念を見据え、次世代を担う営業としての力を得ることを意識していただけたらと思います

このように今回は「企業が今どこの段階にあるか」といったいくつかのフェーズに分けて解説を進めてまいります。売上や組織全体の変革に関わる内容となっておりますので、ぜひ実践していただきたく思っております。

御用聞き営業とソリューション営業の違いとは?

まず、「御用聞き営業」と「ソリューション営業」、それぞれの定義を確かめていきましょう。

今回お伝えする定義は、あくまで私、小沼自身の考え方による内容であることをご留意ください。

御用聞き営業とは?

「御用聞き営業」とは、「お客様から言われたことを叶える営業」のことです。

例えば、あなたがルート営業をしていたとしましょう。ルート営業では、日々様々な「お客様からのリクエスト」を受けるようになります。「あの商品持ってきてよ」「早く見積もり出して」「なんか新商品ないの?」など。

このリクエスト解決のように、実際にお客様から言われたことを叶えていくものが「御用聞き営業」です。

一見「お客様から言われてることを叶えるんだから、素晴らしい営業じゃないか」と思われるかもしれません。これは営業マン側にとって、実は楽な営業です。人間の脳は変化を恐れるようにできており、現状維持しようと思うためです。

御用聞き営業が楽な理由は「ホメオスタシス(恒常性機能)」というものに関わっています

人間の体には、暑いと汗をかいて熱を放出し体温を一定に保とうとする機能があります。このように身体の状態を一定に保とうとする機能をホメオスタシスといいます

実は、私たち人間の脳やメンタルにもホメオスタシスがあると捉えることができます。私はこれをメンタルホメオスタシスと表現しています。

変化を恐れるし、変化したくないため、言われたことだけをただやるというのが楽なのです。 

もし変化を求められ、嫌々お客様から依頼されたことを進める御用聞き営業だけではなく、提案するようなソリューション営業を指示されても、変化を求められて脳に負荷がかかるため、やりたくないという心境になります。

つまり、もしあなたの会社の営業部門が御用聞き営業しかしなくて困っているとしたら、それは至極当たり前のことなのです。

御用聞き営業で求められる力とは説明力です。お客様から問われたことに対して適切な説明ができるかどうか、です。以上が「御用聞き営業」の特徴でした。

ソリューション営業とは?

これまで御用聞き営業のシステムを見てきましたが、時代背景をたどってみた際、御用聞き営業がどれだけの効果性を発揮すると言えるでしょうか?実は御用聞き営業とは、あまり時代に即しているとは言えません

一昔前、物が不足していた高度経済成長期は、御用聞き営業で良かったのです。なぜならば、物が不足しているので、説明をすれば売れた、そういう時代でした

今はどうでしょうか?物があふれていますよね。さらに、Amazonなどでベッドにいながら説明は読めます。ネットで説明が読める上に、スマホのボタンひとつで高額の商品を購入できます。

このような時代に我々は既に突入していることを考えると、御用聞き営業というものの相対的価値が下がっているイメージが、自然とできてしまうのではないでしょうか?

実際、お客様は自分たちにとって必要な知識を簡単に手に入れてしまいます。説明するという行為はWebやAIが代替してくれているのです。

御用聞き営業の価値が下がってきて、新たに求められたものが「ソリューション営業」です。時代の大きなうねりの中で、物はあふれ、説明しても買われなくなりました

それでは、ソリューション営業の定義について考えてみましょう。

御用聞き営業は「お客様から言われたことを叶える」ものでした。

ソリューション営業とは、「お客様の問題解決を図る営業のこと」と定義します。

御用聞き営業とソリューション営業は、似て非なるものです。

例えば損害保険のルートセールスをする場合を考えます。実は業界事情的に、損害保険の収入はどんどん下がってきているという現状があります。収入の比重としては自動車保険の手数料が多かったのですが、昨今では自動運転といった技術に代表されるように、事故を防ぐ技術が発達したため、自動車保険における収益は減少傾向です。

そういった状況下で、各社様が生き残りのために取り組んでいることは生命保険の営業です。損害保険のお客様に、生命保険の提案をする機会が増えました。

しかしながら、その提案の場ではお客様に「御用聞きの営業」しかできず、損害保険の手続きや契約更新といった商談で終わってしまいがちです。

そこでお客様に「ソリューション営業」ができれば理想なのですが、実現できている企業様は多くありません。

保険業でのソリューション営業では、例えば損害保険加入のお客様が資金繰りに悩んでいた場合、その悩みを「お客様が抱えている問題である」と自覚する事が必要になります。

その問題に対して、自社の生命保険など、多数のサービスどれかで解決できないだろうか、と探り、提案できれば、ソリューション営業が実現できたと言えます。

お客様からリクエストはもらっていないことではあるものの、ポロっと口にした言葉、あるいはお客様が何気なく話題にしたことを拾い「ああ、この方はこういう課題・問題を抱えているんだ」ということを自覚し、積極的に提案をすることが、まさに問題解決をするためのソリューション営業です

御用聞き営業とソリューション営業の違い

「御用聞き営業」では説明力が求められましたが、ソリューション営業で求められるものは「問題解決力」になります。この必要な技術の差異が、両者の違いといえます。

より考える力、いわゆるロジカルシンキングなどが求められることが、ソリューション営業の大きな特徴です。

こういった特徴から、ソリューション営業は難しいものになります。先の段落でも解説したように脳は変化を恐れますので、考えたくない、言われたことだけやっていたいのです。

しかし、言われたことだけやるのでは御用聞き営業にしかなりません。そこからさらに自社だけでしか出来ないクリエイティブな事や、セールスパーソンが独自に考えた問題解決の提案をしていくことが必要です。数段、上の難易度となったことがご理解いただけると思います。

商品やサービスが余っている時代においては、このソリューション営業ができないと売れないのです。今、巷の営業本やセールス支援コンサルなどは、しきりにソリューション営業という言葉を伝家の宝刀のように繰り返します。

これまでご紹介した2種の営業では、説明力と問題解決力、と全く異なるスキルが必要となるため、その違いに経営者の方々が悩むことになります。そのため、はじめにご紹介したように、私どもへ「御用聞き営業営業マンが多い現状を脱したい、支援してほしい」とご相談なさることになります。

こういった悩みを言い換えると、つまりは「『ソリューション営業』ができるようになりたい」という悩みと捉えられます。

ぜひ、御用聞き営業とソリューション営業の違いを理解していただき、先を見据えるきっかけとしていただきたいと思っております。

第三の営業スタイル「気づきを与える」「ベネフィットを調整する」

そして私はこれからの時代、次にご紹介する3つ目の新たな営業スタイルが求められてくると考えています。

先ほどのソリューション営業は、お客様が抱えている問題を解決する新たなソリューションを提案していこう、というものでした。 

しかし昨今、多くの企業様・個人の方が実は自分の本質的な問題すら自覚していないというケースが多々見られます。自らの課題について無自覚であるケースが増えています。 

その証拠に、もし自分の本質的な問題を本当に自覚しているのであれば、当の問題は解決できてるはずです。つまり状況が改善されているはずです。

お客様が問題を自覚していて、解決に向かって行動を繰り返しているにも関わらず、状況が改善されてない、つまり会社の状況が良くなっていないということは、実はお客様自身が自覚していない・気づいていない領域に本質的な課題が潜んでいる可能性が非常に高いと私は思っています

そこで、セールスパーソンは「気づき」を提供することが非常に大切になります。

気づきとは、脳科学的には「アハ体験」と表現されます。ドイツの心理学者、カール・ビューラーが提唱した考え方です。

アハ体験の起こし方については、『人はなぜ購入するのか?営業マンが知っておきたい「ドーパミン報酬予測誤差」を解説』に記載していますので、是非ご確認ください。

ある種の感動・気づき・ひらめきを相談など営業活動プロセスの中で提供していくという役割が、我々セールスマンには求められていると私は思っています。

本質的な課題が見えておらず、うまくいっていない企業が多いということは、我々は本質を照らすような気づきを提供し、お客様に感動を与えるべきなのです。

気づき・感動を与えることにより、セールスパーソンに対する信頼が格段に上がり、結果的にお客様自身が「あなたに/あなたの会社に、お願いしたい」という状態になります。 

次の時代に求められるセールススタイルとは、このような形なのではないでしょうか。

ソリューション営業でお客様の問題解決を図ることも大事なのですが、ぜひ、あなた自身もお客様が自覚していない課題にまで踏み込み、お客様に気づきを与えて「ああ、そうなのか」と思っていただけるようなセールスを目指してみてください。

例えば、「売上をアップさせたいから、マーケティング施策やセールスの変革、新たなプロダクトを開発すべきなのだろうか」と思っている顧客がいたとします。彼らにソリューション営業をしようと思ったものの、実はそもそも組織体制が社長や一部のトップセールスに依存しきっているといった問題を持っているかも知れません。その場合、ソリューション営業をするのではなく、「依存」という組織体制の課題を指摘する必要があります。 

本質的な課題に対し、自社の商品・サービスがどのようにベネフィットを調整できるかをセールスパーソンは考えるべきであると私は思います。

この考えは、私自身がセールスの本質的な意味を「調整活動」であると認識しているため導き出されました。

調整活動とは、お客様が抱えているお困りごとや課題と、自社の商品・サービスが提供するベネフィットを関連付けることです。この活動ができるかどうかによって、お客様の無自覚な課題を発掘し、ソリューションが提供できるかが決まります。ひいては、抜本的にお客様の成果も変わってくるのです。

「お客様が自覚していない本質的な課題も見つけ、気付きを与えていくことでアハ体験を得る」という、プロセールスとしてのスキルがこれからの時代に求められているといえるのではないでしょうか。

自分の営業スタイルを見直し、新しいステージへと進もう!

今回はセールス活動を「御用聞き営業」「ソリューション営業」「プロセールスとしての営業」という三つのフェーズに分け、各視点の解説をいたしました。

自分たちがどこにあてはまっているのか、そしてさらに次のステージに行くためにはどうすればいいのかについて、ぜひコラムを参考にして、考えてみてください。

また、大前提のセールスにおける顧客との信頼関係の構築方法については、『商談で顧客と信頼関係を構築してセールスするために必要な4つの役割』を参考にして、実践してみてください。

投稿者:
代表理事
小沼 勢矢

一般社団法人プロセールス協会代表理事。株式会社プロアライブ代表取締役。脳科学を活用したコンサルティングを8年で3,500人以上のクライアントに提供してきた。コロナ禍で営業に課題を抱えるクライアントが増加したことがきっかけで、脳科学を基にしたセールスメソッドを確立。価値あるサービスを世の中に上手く届けられずに困っている事業者様を支援したいという想いから、一般社団法人プロセールス協会を設立。 【出版実績】 自分の脳に合った勉強法(フォレスト出版) シャイン博士が語るキャリア・カウンセリングの進め方(翻訳) シャイン博士が語る組織開発と人的資源管理の進め方(翻訳)

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