セールスの場においては「3つの感情」をいかに使い分けるかが必要です。顧客が購買に至る心理構造を明らかにしたメカニズムともいえるもので、三つの感情をどのように使い、レベルアップさせていけばいいのか、具体的なノウハウもありますので実践していきましょう。
セールスの場においては「3つの感情」をいかに使い分けるかが必要
脳科学に基づくと、セールスの際、成約率を高めるために「不安」「安心」「感動」という三つの感情をいかに扱うかが必要です。
顧客が購買に至る心理構造を明らかにしたメカニズムともいえるもので、三つの感情をどのように使い、レベルアップさせていけばいいのか、具体的なノウハウもありますので実践していきましょう。
第一の感情「不安」
まず、お客様が最初にセールスパーソンと話をする瞬間だと、どういう感情となっているでしょうか。商談が楽しみ、ワクワクするといった「嬉しさ」はあまりないはずです。また「感動」も同様にないでしょう。
商談の初期においてお客様が抱く感情は「不安」です。セールスパーソンがまず認識すべきお客様の状態です。
お客様の「不安」を取り除くために①「共感する」
脳科学的には、ノルアドレナリンやコルチゾール等ストレスを感じるような神経伝達物質が分泌されやすい状態になるのが「不安」です。そのためセールスパーソンはお客様の不安な状態を和らげなければいけません。
お客様の不安状態を認識せず、いきなりお客様を質問責めにする、いきなり商品の説明することは効果的ではないのです。
不安解消のためには、お客様が不安を感じている時に共感をすること、そして共感によって心理的安全基地を作ることが重要です。心理的な安全基地とは、俗に言う「ラポール」です。
お客様の「不安」を取り除くために②「第一印象を上げる」
その他、不安な状態に有効的な手法として「第一印象を上げる」というものがあります。
第一印象を上げることができれば、お客様の不安要素は大きく軽減されます。
リアルのセールスでもオンラインのセールスでも、第一印象はお客様の不安な感情を軽減するためにとても大事です。
第一印象を上げるためには「三つのポイント」があります。
第一印象を上げるために①「表情」
第一印象を上げるために必要な一つ目のポイントは「表情」です。
例えばセールスパーソンとして誰かに会う場合、ムッとした表情していると相手はどう感じるでしょうか?良い気分ではないはずです。
車を買おうとしてカーディーラーに行った際、ムッとした表情の方に商品説明されてもなかなか受け入れることはできません。
このように、表情はとても大きな印象を相手に与えます。
表情を良くするには、口角を上げるというような練習をしましょう。基本的なトレーニングをすることで表情の良さが身につけられ、相手にポジティブな印象を与えられるようになります。
第一印象を上げるために②「声のトーン」
二つ目は「声のトーン」です。
少し高めなぐらいがちょうどいいと認識してください。
私、小沼はセミナーを行う際、声を比較的高くするように意図しています。
「今日はものすごくテンションが低いため、声も低くします」となったら、印象は少し悪いです。
高い声で明るく「どうぞよろしくお願いします!」という状態で商談が始まった場合ならば、相手から受ける印象はポジティブになります。
特に男性の場合、どうしても声のトーンが低くなりネガティブな印象を与えてしまいがちなので、高めに設定をすると意識しましょう。
第一印象を上げるために③「姿勢」
三つ目は「姿勢」です。
ポジティブな印象をお客様に与えるためには、しっかりとした姿勢で臨むことが大切です。
背中が曲がっていたり、丸まっていたり、伏し目がちになっていたり、お客様と目を合わせることなく会話をしていたりしてしまうと、お客様はネガティブな印象を持ってしまいがちです。
正しい姿勢を見せることによって、お客様の感情が「不安」から「安心」に変わります。
「この人には私の本音を話しても大丈夫なんだ」「この人に私の胸の内を明かしても大丈夫なんだ」「この人は安全な人なんだ」というように、相手が発話者のことを安心だと思えるようになります。
第二の感情「安心」
この「安心」が、これまで見てきたお客様の「不安」→「安心」に連なる続いての感情「感動」へとつながるのです。
この時は、セロトニンやオキシトシンといった安心、安全を感じる神経伝達物質が分泌されやすい状態です。
安心の状態にまでお客様と打ち解けられれば、信頼に足る人物だとこちらを評価してくださり、お客様が本音を話してくれたり、普段は語らないような胸の内を明かしてくれたりということが起きます。
やはり人間と人間同士の会話であるため、いかに本音で話せるかが大切です。そのため、この状態になればセールスは進めやすくなることでしょう。
自分だけがベラベラ喋っているセールスパーソンは、相手が自分の胸の内を明かしてくれないため、いつまでも物が売れないということになりがちです。
共感してしっかりと心理的な安全基地を形成し、第一印象を上げることによって安心という感情をお客様に手に入れていただきましょう。
「安心」の危険~心理的完了が購買意欲を削ぐ
しかし、この安心という感情だけではお客様は物やサービスの購入には至ってくれません。
それは、満足してしまうからです。
お客様が「安心」した状態が強くなりすぎると、心理的完了という状態になります。
この状態では、お客様は「良かった、もう安心」と勘違いしてしまいます。
もちろん、カウンセリングや対人支援職においては、共感したお客様にしっかりケアしていくことは大切です。
しかし、ことセールスにおいては、満足を喚起してしまいなかなか購買につながらないことも少なくありません。
つまり、お客様に心理的完了を起こさせてしまってはいけません(人間の、未完了のものや一部が隠されている部分に興味が向くという心理的特徴をザイガニック効果と言います)。
第三の感情「感動」
お客様に心理的完了を起こさせないために必要な感情が、三つ目の「感動」です。
感動を与えることで、購買していただけるのです。リピートなどが起きることも考えられます。
感動の際、脳の中は神経伝達物質であるドーパミンが分泌されている状態です。
私の体験ですが、以前遅い時間の外食が可能だった時期にメンバーと訪れた近場の居酒屋で、「客が帰る時に手作りのお味噌をプレゼントとして渡してくれる」というサービスを受けたことがありました。
非常に美味しいメニューを提供してくれる店舗なのですが、一見すると普通の居酒屋なので、そのようなサービスをしているとはメンバーは誰も思わなかったのです。
プレゼントのサービスをしてくださった際、「よかったらこちらを持って帰ってください」とお声がけを受けただけでなく、わざわざ店外までお見送りをしていただきました。
こういった出来事は「感動」です。「また来よう」と思うのです。
「こんなに素晴らしい対応をしていただけるんだ」「こんなに感動的な対応をしていただいた」という思いが「次も来よう」という動機につながります。
まさにこの状態が、ドーパミンの分泌状態であるといえます。
セールスパーソンは、商談の最中に感動を引き起こさなければなりません。
(人はなぜ購入するのか?ドーパミン報酬予測誤差のメカニズム)
感動させられるかどうかが、お客様のリピートや購買行動を起こしてくれるかに繋がるため、感動を起こすことを意識しましょう。
「感動」の起こし方
感動をどのように起こせるかについて脳科学的に説明すると、「アハ体験」を利用するということになります。
「アハ体験」とは気づきやひらめきが得られる体験のことです。
アハ体験が起こると脳は感動を感じやすくなり、ドーパミンが神経伝達物質として分泌され、購買行動に至るのです。
したがって、商談にてお客様に安心していただいた後は、どこかのタイミングで意図的にアハ体験を提供しなければなりません。
プロセールスとは、商品の説明役で終わってしまってはいけません。
(プロセールスと従来型の営業マンの違い)
商品の説明をしてもアハ体験は生まれません。むしろお客様は商品説明をほとんど聞きたくないものです。もちろん、よほど世の中にない差別化された商品であれば話は別かもしれません。
成約率を高めるために、商談の最中にいかに再現性をもってアハ体験、気づきやひらめきを提供できるか意識してください。間違ってもお客様が聞きたくもない商品説明だけに終始してしまい、商談がうまくいかないという失敗をセールスパーソンにはしていただきたくはないと私は考えております。
成約率アップのために、3つの感情に対して適切にアプローチを使い分けよう!
今回ご紹介した「成約率を高める三つの感情の使い方」を理解していただけたら、「不安」「安心」「感動」をいかに使い分けていくのかを意識してセールスのプロセスを読み解き、再現性の高いセールスの結果を手にしてください。