セールスにおける相場観とは?
セールスにおける相場観とは、「あなたの商品やサービスを何と比較しているのか」というお客様の感覚のことを言います。
このセールスにおける相場観の定義は、私たちが独自に提唱している定義ですが、セールスをおいてとても大事な考え方です。
例えば、今私の目の前に500ミリリットルのペットボトルに入った水があります。
この水を、スーパーやコンビニで買う時にいくらぐらいの価格をイメージされるでしょうか。
おそらく100円前後の価格をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
300円や、400円、500円という価格をイメージされる方は非常に少ないんじゃないかと思います。また、もし仮に500ミリリットルの水がその価格だったら買わないという人がほとんどだと思います。
これはなぜでしょうか?
それは、「私たちが500ミリリットルのペットボトルの飲料水は、だいたい100円前後だという相場観を持ってるから」です。
ですから、多くの種類のペットボトルの水の中に一つだけ300円とか400円のものがあったとしても買わない人がほとんどだと思います。
一方で、ペットボトルの中身がただの水ではなく水素水だったとしたらどうでしょうか?
水にくらべて価格は高くなるでしょうか、安くなるでしょうか。
おそらく、価格は高くなるとイメージされる方が多いと思います。
なぜなら、私たちは「同じ水であっても水と水素水では水素水の方が価格が高い」という相場観を私たちは持っているからです。
すなわち、お客様のもつこの相場観をいかにコントロールするかが、セールスの現場において重要になってくるという事です。
セールスの場でお客様の相場観をコントロールするためには?
例えば、私たちは税理士の先生に「顧問契約は提案するな」ということをよく言います。
なぜなら、お客様の頭の中に「顧問契約の相場観」がセットされてしまい、その相場観と無意識に比較されてしまうからです。
税理士の顧問契約料は、東京か地方かによっても価格が違うと思いますが、恐らく高くて5万円、最近は場合によっては2万円や3万円の価格もあります。10万円以上の顧問契約料を税理士にお支払いしているというのはレアケースかと思います。
つまり、「税理士の顧問契約を取りに来ました」「税理士の顧問契約を契約してください」と言ってしまうと、その瞬間にお客様は税理士の顧問契約という相場観で無意識に判断してしまうのです。
結局、単価も上げられないし、場合によっては想定の相場観より高いと断りが入ってしまうという事も起こり得ます。これが「相場観」の持つ恐ろしさです。
ですから、セールスを成約させるためには、相手の相場観をいかにコントロールするかが重要なのです。
では、どのようにコントロールをすれば良いか、そこで重要になってくるポイントが「比較対象のコントロール」と「アンカリング」です。
ポイント1:「比較対象のコントロール」で単価を上げよう!
お客様の相場観をコントロールするための方法の1つ目が「比較対象のコントロール」です。私が実際に経験した事例を使ってこの方法について解説していきます。
2017年の話になりますが、顧問契約を5万円で契約できている税理士の先生がいらっしゃいました。
当時の税理士の先生の中には1万円程度の価格で顧問契約をされている方もいたので、その中で顧問契約料5万円というのは非常に素晴らしい成果です。
しかし、その税理士の先生に私があることを伝えると、その先生の顧問契約が10万円上がったのです。一体なぜ2倍で契約できるようになったのでしょうか。
実は、その先生はそれまで、顧問契約として税理士の契約を獲得していました。
顧問契約の相場観はどんなに高くても5万円だったので、私はその先生に「これから顧問契約と言うのをやめてください」と言ったのです。
税理士の先生にとっては「顧問契約と言わずに、何と言って契約を取れば良いのか」と思われたかと思いますが、要するにこれは「何と比較対象して欲しいか」ということなのです。
これが、先ほど言った、比較対象をコントロールするということです。
私は税理士の先生に、営業する際に「私は税理士としてこれぐらいの実績があって、これまでこんな経験や体験をしてきた。こういう成果をもたらしてきた。この財務や税務などのプロフェッショナルとしての私を、新卒の給与の半分以下で雇うことができるとしたらいかがでしょうか」と提案してくださいと伝えたのです。
つまり、「顧問契約をしてください」という表現から、「私を社外財務責任者(CFO:チーフ・ファイナンシャル・オフィサー)として自由に雇うことができる権利を、新卒の給料1/2以下で獲得できるとしたらどうでしょうか」という表現に変えてもらったのです。
そうすると、お客様の相場観が、ただ単に記帳代行の業務をしてくれる税理士から財務の責任者かつプロフェッショナルに変わり、さらにそのクオリティを新卒の給与の1/2で活用できるという様に変わってきました。
結果として、「当時の新卒の給与20万円の半分の10万円で雇うことができるならば安い」ということになり、10万円の顧問契約がどんどん取れていきました。
ちなみに、この税理士の先生は現在50万円の契約も取られています。
税理士の先生に50万円も払っていることをイメージできる方は少ないと思いますが、実はこれは単に税理士の業務だけではなく、いろんなコンサルティングサービスを含めての50万円ということです。
単に単価を上げれば良いという話ではありません。セールスにおいてこの相場観というものを、お客様との商談中にコントロールしていくことがいかに重要かということです。
繰り返しになりますが、あなたの商品やサービスが何と比較されれば、お客様の購買意欲を高めていただけるようになるのかを考えることが重要です。ぜひ、みなさんも「比較対象のコントロール」を意識してみてください。
ポイント2:アンカリングによって価格に対する抵抗感を薄くする
相場観をコントロールする上で重要なもう一つのポイントが、「アンカリング」です。
アンカリングとは、お客様との商談の最中や前から、自分の商品やサービスがどのぐらいするかということを、それとなくお客様の脳内にプログラミングするという方法です。
セールスが下手な人は、商品やサービスを提案する時に、価格が高いと思われてしまいがちです。つまり、お客様に価格を伝えた時に、お客様が想像もしてなかったような高い金額を提示すると、ほぼ100%成約には至りません。
これを未然に防ぐ方法こそが「アンカリング」です。
具体的なアンカリングの方法としては、セミナーなどの最中に自分の商品やサービスの平均単価を言ってしまうなどがあります。
「70万円以上ですよ」「100万円以上しますよ」「企業コンサルの場合だと1000万円近い契約をいただくこともありますよ」などの表現をすることで、お客様は無意識に、このサービスってこれぐらいするんだなということが分かります。
事前にサービスの平均単価を言ったことにより、お客様には価格を受け止める心理的な準備ができているため、後々に提示した商品やサービスがある程度高額であったとしても、そこまで高額だと思わなくなるのです。
比較的価格に対する抵抗感が薄くなるということが起きます。これがアンカリングです。
このように、あなたの商品やサービスの価格がだいたいどれぐらいなのかをセールスの最中や前に、自然と組み込むことによって、お客様の心理的な準備ができた状態になります。
そうすると、価格に対する抵抗感が比較的ない状態でセールスができます。結果的に成約率が高くなるというわけです。
ですから、アンカリングという方法を、「相場観をコントロールする」ための2つ目のポイントとしてぜひ意識してみてください。
実際に、どうすればあなたの商品やサービスにアンカリングができるのか、どのようなトークや見せ方をすればお客様の価格に対する抵抗感がなくなりやすいのかを、しっかりと考えてみてください。