今回のコラムでは、「口べたでも大丈夫!人を動かす話し方のコツを解説」というテーマでお話いたします。
「人を動かす話し方」に必要なものは「所有感」
セールスやプレゼンテーションにおける「話し方が上手くなる方法」や「商品の魅力をどのように伝えるかという技術」をビジネス書やセミナーで教えるケースがよく見られます。
プロセールス協会でももちろん、伝え方にはコツがあり、身に着けることが大切であると考えています。
しかし実は、伝え方のコツやテクニックを学ぶ前に知っておくべき、今回のテーマでもある「人を動かす話し方」「心を動かすメッセージの伝え方」にも関わる考え方があります。
それは「所有感」です。
物を所有する、という所有感です。
所有感がある人とない人では、話の内容が人に伝わるかどうかの度合いがまったく違ってきます。
感情伝播研究 - 人の「感情」は意図しなくても伝わってしまう
プレゼンテーションにおいて、所有感を持って聴衆の心を動かせる人の話を聞いていると、ある特徴があることに気づきます。
この特徴は2つ挙げることができ、いずれも科学的な根拠にも基づいたものです。
一つが「感情伝播研究」という学術的な研究に関することです。
感情電波研究とは、その名の通り「感情がどのように伝播するのか」ということについて調べたもので、主に口コミの研究が主体でした。
例えば「A」という商品が大好きな人たちのグループと、同商品が大嫌いな人のグループそれぞれに新しく人を混ぜたとします。
すると、前者に新しく加入した人は「A」という商品に対して好意的な感情を覚えます。一方、後者グループに後から参加した人は「A」という商品が嫌いになるという傾向があるとわかりました。
これがまさに感情伝播です。
人の感情は伝播してしまうということです。
お客様の感情をコントロールする方法については、「3つの感情を使い分けて顧客の購買意欲をコントロールする方法」の記事に記載しているのでぜひ読んでみて下さい。
もしセールスパーソンが自分の話す内容に自信がなかったり、どこか不安に思っていたり、心配に思っていたりすると、そのまま相手に伝わってしまうのです。
したがって、常に所有感をもって相手にメッセージを伝えなければ、相手の心を動かすことはできません。
ミラーニューロン - 第三者に「共感」するメカニズム
所有感を持って話すために意識することとしてもうひとつ、人間の脳の中にある共感細胞「ミラーニューロン」の機能が挙げられます。
人間の脳には、「ものまね細胞」とも言われる共感細胞、つまり人に共感するメカニズムがあるのです。
イタリアのパルマ大学で行われた猿の実験から発見された機能です。当実験はもともと餌を食べている猿がいて、その様子を見ている猿がまた存在するという状況下で行われました。共感システムが脳の細胞として人間に備わっているということは、当時大きな発見となったそうです。
実験では、バナナを食べている猿、そのバナナを食べている猿を見ている猿、ともに脳の中で「快楽」や「嬉しい」という反応を起こしていることがわかりました。
つまり、人間には第三者の嬉しい時の感情、悲しい時の感情について共感する力が備わっているのです。
例えばもらい泣きであったり、イライラする人と一緒にいるとなぜかイライラしてしまう、焦っている人の近くにいると焦ってしまう、面接官という立場でありながら緊張している人の近くに居ると緊張してしまったりと様々なパターンが挙げられます。
こういった反応にはミラーニューロンが大きく関わっています 。
「感情伝播」というメカニズムと「ミラーニューロン」の反応からわかることは、「セールスパーソンの感情は、お客様に伝わってしまう」ということです。
この事実は非常に恐ろしいものですが、逆に、自分が説明している商品、自分が伝えたいメッセージについて「所有感」があればあるほど相手は感情伝播やミラーニューロンのメカニズムが作用して、心を動かされるということになるのです。
ぜひ当コラムで所有感の大切さについて実感してください。
所有感を高めるために必要なこととは「言語化」
次に、「所有感を高めるためにはどうすればいいのか」についてお伝えします。
ポイントはたった一つで、それは「徹底的に言語化する」ということです。
「言語化」を積み重ねていけばいくほど、自分の中での所有感はどんどん高まっていきます。
プロセールス協会のクライアント様の中には中小企業の経営者の方がいらっしゃいます。
そういった経営者の方々が、社員や取引先に対して経営計画発表会というものを開催することがあり、社長である経営者自らが会社のビジョンや思い、取引先に対する感謝の思いなどを口にします。
その際、所有感を持って語っている人と、そうではない人では心を動かされるかどうかというように明確に内容が分かれます。
所有感を持って語る人は、話す前に徹底的に考え抜き、何度も自分の頭の中を言語化、修正して「所有感」のある言葉に変換するという作業をおこなっています。
一方で、どこかから言葉を借りて話す方、毎回同じことを語るような昨年から進歩がない方の場合は心に響きません。
どれだけ自分と向き合ったか、自分の頭を言語化したか、何度も修正を重ねるというような地道な活動こそが、語り手の話す内容に大きな変化をもたらすのです。
自分の中での所有感を高めるために、言語化を繰り返すよう意識してみてください。
所有感の構築に効果的な「ゴールデン・サークル」
サイモン・シネックという方が提唱する「why=なぜ」「How=どのように」「what=なにを」という3つの層からなる「ゴールデン・サークル」という考え方があり、言語化を進めるためのフレームワークとして活用できます。
プロセールス協会にゴールデン・サークルを当てはめて考えてみます。
プロセールス協会は、セールスのプロとしての考え方やノウハウをお届けをしています。
「なぜ」このプロセールスという事業に全力を注いでいるのかと言うと、「プロセールスの力で社会に活力をもたらす」という思いをミッションとしているためです。
ここがプロセールス協会の「why=なぜ」にあたります。
次に「どのように」実現するのか。プロセールス協会が輩出してきたプロセールスの方々が輝ける「プロセールスプラットフォーム」の構築によって、です。
プロセールスプラットフォームは、「世の中に広めるべき価値ある商材」をしっかりと担保して、その価値ある商材をプロセールスの方々が広めていくという構図となっています。
そのために、whatにあたる「プロセールス養成講座」や「法人対象のオンラインセールス研修導入支援」を開催、提供しています。
このようにwhy、how、What(なぜやるのか、どのようにやるのか、何をするのか)という順番で考えていくと自分の考えが整理され、脳で言語化しやすくなります。
ただ、プロセールス協会もはじめからこういった「社会に活力をもたらす」というテーマに基づいたプロセスを導き、明確に言語化できていたわけではありません。
ポイントは、最初から繰り返し繰り返し思考を重ねていくことです。そうすることで、次第にだんだんとおぼろげながら形が見えてくるといった感覚であると認識してください。やはり、簡単に全容が掴めるということではありません。
徹底的に言語化を繰り返し、自分の中の所有感を高めよう
人に伝わる、心に響くメッセージを作り上げるということは、なかなか一朝一夕でできることではありません。
自分の絶え間ない努力と、日々の鍛錬が必要です。言語化は非常に苦しい作業です。
自分の言葉や、心の底からの思いというものを言葉にすることは簡単なことではありません。
それでも徹底的に言語化を繰り返していくからこそ「所有感」があるメッセージが生まれ、その所有感のあるメッセージが人の心を動かします。
是非、今回ご紹介したようなゴールデン・サークルの考え方などを活用しながら、ご自身の商材に対する思いを言語化し、どんどん所有感を高めることによってプレゼンの精度を磨いてください。